「どうして家にはサンタのおじさんは来てくれないの?」
「それはね、これからずっと先に一人だけのサンタさんに逢うためなのよ。」
「、一人だけ?」
「そう、あなたにもきっと素敵なサンタさんが現れてくれるわ。」
「・・・素敵なサンタさん?」
「がいい子にしてたらサンタさんはきっとを大切にしてくれるはずよ。」
「うーん・・・。分かった!それまでいい子にしてる ! ! 」
ピピピピ・・・ピピピピ・・・ピピピピ・・・ピピピピ・・・
「う〜ん・・・うるさ・・・い・・・・・。」
毎日、同じ時間、同じ場所から私の睡眠を妨害する目覚まし時計。
同じ朝の始まり。
いつものように布団に入ったまま手探りで目覚まし時計を探し当てると再び夢の中へ・・・・・
「?」
いつものパターンなら二度寝コース直行なのに・・・。
さっきまで見てた夢のせいだ。
小さい頃の私。
サンタは絶対いると思ってた。
それも私一人だけのサンタクロース。
母が私に教えてくれた夢物語。
現実には絶対ないって分かっていても私は母の教えてくれたサンタの夢物語が大好きだった。
この世の中にそんな都合の良いサンタがいないと知るには相当後だったけど
大人になるにつれて理解も出来た。
「さて、起きるか!」
心地よい温かさの布団から思い切って飛び出すと一気に目が覚めて現実世界に引き戻された自分に
少しうんざりしながら今日もいつもと同じようにトースターに食パンを投げ入れ身支度を整える。
準備が整っていてもいなくてもトースターの中のパンが焼ければ急かすようにお知らせ音が鳴り、
決まった銘柄の牛乳とバターを薄く塗ったパンを一人寂しくテーブルで食べれば
くだらない一日は、ますます本格的になっていく。
クリスマスだっていうのに大好きな彼からは何の連絡もないまま今日を迎えた。
ベットの枕元には大きな靴下と部屋の隅には腰の高さ程のツリー。
どれも今となっては悲しい風景にしか見えない。
「さてと・・・。」
牛乳を飲んだカップとパンの皿をシンクへ運ぶと上着を羽織りマフラーをしっかり巻くと
テーブル脇に置いてあるバッグを持ち家を後にした。
「うわ・・・。」
街に出たは思わず声を上げた。
そう、今年のクリスマスは何と言ったって土、日。
家から一歩外へ飛び出せば嫌でもアツアツなカップルを目にすることになる。
それは覚悟していたのに予想以上に街には嬉しそうに手を繋ぎ微笑み合う男女が溢れていた。
「こんな日に外出するなんて私ってバカ・・・。」
どこを見て良いのか分からない程にイチャつくカップルを横目に早足で歩き出すと
目的地の大きなデパートは、すぐそこまで近付いていた。
デパートに入っても街の中の状況とは変わらず、ラブオーラがそこ等中で飛び交う。
そんなオーラを避けるように地下の食品売り場を一目散に目指すとお気に入りの洋菓子店で
30個限定のクリスマスケーキを買い急ぎ足でデパートを後にした。
「あれは強烈だったな・・・。」
家に戻ったはぐったりした様子で言った。
そんな独り言も負け犬の遠吠えに聞こえてしまうクリスマス。
短時間の外出が思いのほか体力を消耗してしまう。
精神的ダメージは喰らったもののは休む間もなく冷蔵庫から取り出した材料と
何度も使っていないだろうと思われる料理本を片手にキッチンへ立った。
「今から始めれば何とか夜までには出来上がる・・・はず・・・?」
不安を抱えながら料理に取り掛かる。
途中、何度かハプニングは起こったものの部屋の窓から見える外の景色が暗くなる前には
一通りのクリスマス料理がテーブルに並んだ。
「実に虚しい光景ね・・・。」
作ってしまったことにちょっぴり後悔しながら、いつもの席に座るとテレビのスイッチを入れる。
「げ・・・」
街へ出掛けた時に味わったラブオーラが更に強く濃くなりテレビの電波に乗って飛んでくる。
は顔をしかめると電源をオフにした変わりにコンポのスイッチを入れ、お気に入りのBGMを鳴らし
この日の為に買ったワインと自分で作ったクリスマス料理で一人寂しく食事を始めた。
は知らぬ間に空になったワインのボトルは床に転がりテーブルに顔を伏せた状態で眠りについていた。
「さむ・・・。」
そのまま眠り込んだが顔を上げた。
「?」
愛用しているひざ掛けが肩に掛けてあるのに気が付く。
「 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 」
目を擦り前を見たはその瞬間、一気に目が覚めた。
「クロロ!」
眠る前には山のように残っていた料理は片付けられテーブルにはデパートで買ったケーキ。
目の前には優しく微笑みかけるクロロ
「やっと気付いたか?」
「な ? ! なななな、何で ? ? ? 」
余りの驚きに声が裏返る。
「・・・・・。」
クロロは微笑んだままを見つめている。
「?」
「・・・・・。」
「クロロ?どこ見てるの?」
「いや、・・・・・。」
そう言ったクロロは笑いを堪えてた。
「 ! ! 」
は慌てておでこを手で隠すと玄関前の姿見まで走っていった。
「あーーーーーーーーーーーーーッッ ! ! ! 」
赤くなったおでこ、頬には洋服の形がそのままで無数の筋が入っている。
急いでタオルを水で冷やすと、そのままおでこに当てた。
「それにしても驚いたな。」
「は ? ! 」
私が一番驚いてるんだけど ! !
声にならない怒りが込み上げる。
「遅くなって悪かったな。」
「え?・・・あ、うん。」
意外な程のクロロの素直さに更に驚きを見せる
「一緒に飲まないか?」
取り出したのは自分では買えないだろうと思われる可愛くラッピングされた高級ワイン
「え?あ、あぁ・・・ちょっと待ってね。」
驚きの連続にうまく頭が回らず返す言葉もあやふやなまま食器棚に向かったはお気に入りの
ワイングラスを二つ手にして戻った。
「あ、ケーキね。」
それでも落ち着くことはなく、今度はキッチンへ戻ると皿とナイフを手に慌しく動く。
「少し落ち着け。」
呆れた様子でクロロがナイフと皿を受け取ると手馴れた手付きでケーキを切り分けグラスにワインを注ぐ。
「ごめん・・・。」
「気にするな。乾杯だ。」
「「乾杯」」
「って、何に?」
「の寝顔に・・・」
「「乾ぱ〜い」」
「、悪いが・・・。」
あっという間に楽しい時間は流れ夜もすっかり深けた頃だった。
「・・・うん。」
「すまない。」
「大丈夫だって!仕事でしょ?」
寂しさを抑えて作る笑顔が悲しげに見える。
「また連絡する。」
「気を付けてね!」
席を立つクロロの後を追って玄関まで見送るとドアノブに手を掛けたクロロが急に振り返った。
「?」
クロロはのさっきまで赤かったおでこにそっと口付けて玄関を後にした。
「ずるいよなぁ・・・。」
そのまま玄関に座り込みそうになる自分の身体に力を入れ直し寝室へ小走りで駆けて行くと
ベランダから見えるクロロの後姿に手を振る。
「さむ!」
温かい部屋の中に夜の冷たい風が吹き込む。
部屋に入ると足元にベットの枕元に掛けてあった大きな靴下。
「ん?」
『ガサガサガサ・・・・・』
「何・・・これ?」
中からはキラキラしたラッピング用紙に包まれた小さな箱。
『ガサガサガサ・・・・・』
ラッピングを解いて箱の中から顔を覗かせたのは何粒ものダイヤが並び光輝くブレス。
驚きながらも手首に付けたブレスは誇らしげに光を放つ。
「クロロサンタ?」
思ってもみなかったサプライズのおかげで寂しさは消え去り胸の中はあたたかい気持ちで
イッパイになったはベットの中に潜り込むと深い眠りの中へ落ちた。
「どうして家にはサンタのおじさんは来てくれないの?」
「それはね、これからずっと先に一人だけのサンタさんに逢うためなのよ。」
「、一人だけ?」
「そう、あなたにもきっと素敵なサンタさんが現れてくれるわ。」
「・・・素敵なサンタさん?」
「がいい子にしてたらサンタさんはきっとを大切にしてくれるはずよ。」
聖なる夜に現れた私にとって、たった一人のサンタクロース。
それはクロロ・ルシルフル
END
****あとがき****
季節はすっかり冬ですねー。
この作品は、そう!
もろクリスマスに向けて書いたモノなのです。
去年はパク×フィンだったけど今年はクロロで勝負だぁぁぁ ! ! !
この時期どこへ行ってもクリスマスだったり正月だったりな雰囲気の中で忙しい皆さまに少しでも
ゆったりとした時間がお届け出来ていれば私としては幸せに思うんですが・・・。
書いている自分が訳分かってない位なんで、そんな効果を出せる作品になっていないのが悲しい結果(泣
それでも最後の最後まで読んでくれているアナタ!
私からアナタへ・・・
ハッピーなクリスマスでありますように♪
****お知らせ****
誰も持って行かないとは思いますが2005念12月25日のクリスマスまでフリー配布してますので
もし貰ってくれる方がいたら、そっと教えて下さいませ♪
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