「お前がここを離れても俺は変わらない。」
別れ 〜4度目の春〜
この街の中で一番大きな桜の木の下に、その日も施設を抜け出してクロロと共には“そこ”いた。
「約束だよ?の事、絶対忘れないでよ?」
はクロロの顔を覗き込むようにして言った。
「あぁ。」
「もぉ〜ッッ!! 最後くらいちゃんと顔見て話してよ!」
「あぁ・・・。」
クロロは読んでいた本をパタンと閉じるとの顔を見た。
「やっとこっち向いた。」
は嬉しそうにニッコリ笑って言った。
数日前、を探して一人の老人がこの街まで来たのだという。
が生まれてすぐ生き別れた父親がいた。
この老人とその家族の家で働く200人近い使用人の中でも一番の信頼を得ていた人物だ。
2ヶ月前そのの実の父親は静かに息を引き取った。
その間際、娘がいるという事を初めて明かし自分が一緒にいてあげられなかった事を後悔し
、
この老人に最初で最後の願いを聞いて欲しいと娘の未来を託したのだ。
「おじいちゃん 誰?」
突然、目の前に現れた老人には言った。
「ワシの名はゼノじゃ。」
「私に何か用?」
ゼノはに、ここへ来た訳を一通り話した。
「これからワシが言う事をよく聞くんじゃ。お前さんはここで終わってしまうには惜しい人間じゃ。
少々厳しいかもしれんがワシのところで特別な訓練をしてみんか?
時間はかかるが一人前になって仕事さえしてくれりゃあ金も自由も手に入る。
どうだ?ワシと一緒に来る気はないか?」
ゼノの言葉を聞きは少しの間、何やら考えている。
「おじいちゃん 私の名前、父親って人から聞いてる?」
「?」
ゼノは不思議そうな顔をした。
「その名前は忘れたし、いらない。ここに来て“”ってみんなに呼ばれてる。
父さんがどーのとか私には関係ない。けど、これからもそう呼んでくれるなら行ってもいいよ?」
は実に子供らしく単純な理由でそう答えた。
「か・・・・。いい名前じゃな。よし、本当の名前はワシの胸にしまっておいた方がよかろう。」
「クロロ・・・・。がいなくなったら寂しい?」
「・・・・・・・・・・・。」
クロロの返事はない。
「はクロロやみんなとここで一緒に遊んだりした事、絶対忘れない。
けど、クロロと離れ離れになるのはやっぱりツライ。もちろんみんなともだけど・・・。
だから約束しようよ?5年待ってて?それまでに頑張って一人前になるから5年後の今日、
この時間にこの場所で待ってて?絶対会いに来るから・・・・。」
は黙ってクロロを見つめている。
「・・・あぁ。お前がここを離れても俺は変わらない。安心して行って来い。」
クロロは今までに見せた事のない真剣な顔を見せた。
何年か同じ時間を過ごした二人は、別々の道を歩いていく事となる・・・・・・。
それは、二人が出会って4度目の桜が綺麗な春の日の出来事だった。
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