つきあかり 〜二人〜
マチとが去った後、ふと我に返ったウボォーは少し離れた場所にいたノブナガを振り返って見た。
「俺等もそろそろ行くか?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「おい!聞いてんのか ? ! 」
「あ?・・・・あぁ・・・。」
「何だ?お前、顔赤いぞ?」
ノブナガの顔を見たウボォーが言った。
「バカかお前 ? ! 俺は暑いだけだ!こんな所に居ても仕方がねぇしサッサと行くぞ!」
ノブナガは照れているかのようにプイッと背を向けるとそのまま歩き出した。
二人はムーンライトパークから歩いて10分位の場所にまだオープンしたてといった感じの和風居酒屋に入る事にした。
この店は個室が売りというだけあってゆっくりとくつろげる場所だ。
個室に案内された二人は酒を飲みながら何やら話している。
「マチの待ち合わせの相手ってのはウボォーも知り合いだったのか?」
「の事か?ありゃ、いい女だろ?知り合いも何もは俺のコレだ。」
ウボォーはにんまりしながらそう言って小指を立てた。
「さっき自分で久々だの何だのって言ってたのお前だろ?大体あの女はお前の趣味じゃねーだろうよ?」
くだらないウボォーの発言にノブナガは呆れた様子で言った。
「俺の女ってのは冗談だけどな! 趣味じゃねぇってのは違うぜ?は高嶺の花だからな。」
「高嶺の花ね・・・。」
「気になるか ? ? 正直に言えば教えてやらねぇって事もないぜ?」
ウボォーはそう言うとノブナガの顔を見た。
「何言ってんだ ? ! ? ! 俺はただ・・・ウ、ウボォーも知ってるみたいだったから何者か聞いただけだよ!」
明らかに動揺するノブナガの顔は酒のせいだけではなくはっきりと赤くなっていた。
「は別に怪しい奴じゃないぞ?アイツも元は流星街だしな。」
「見た事ねぇな。」
「だろうな。は昔どっかの金持ちに引き取られてったからな。まだ俺とお前が知り合う前の事だしな。」
「・・・・・・・・・。」
ノブナガは冷酒をチビチビ飲みながらウボォーの話に耳を傾けている。
「今はその家の仕事やってるらしいぜ。詳しくは俺も聞いてねぇけどな。」
「お前、ガキの頃から会ってねぇのによく分かったな?」
「あぁ、そりゃもう昔から可愛くて目立つ奴だったけど何年か前に会ったからな。その時はえらく美人になってたから
かなりビビったぜ。残念な事に男もいやがってよぉ・・・。(その男が団長だってのわざわざ言う必要もねーな。)
ま、今はフリーらしいぞ?」
ウボォーは黙って聞くノブナガの顔を覗き込むと二ヤッと笑った。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
ノブナガは顎鬚を触りながらある場面を思い出していた。
「おぉ!そうだ ! ! 思い出したぞ!」
それまで黙ってウボォーの話を聞いていたノブナガが口を開いた。
「あ?思い出したって何をだ?」
「いや、そうだと思うんだが、自信がねぇ・・・。」
必死に何かを思い出そうとするノブナガ
「まぁ、普段から頭使う事なんてねぇんだからよ?あんまり考えると爆発するぞ。」
バカにするようにウボォーは言うと笑った。
「お前に言われちゃお終いだな・・・。」
ノブナガは冷ややかな視線を送ったがウボォーはそんなことは気にせずジョッキに残るビールを飲み干した。
「おーい!姉ちゃん ! ! ビールをピッチャーで・・・それと冷酒頼むぜ!」
二人がお代わりを頼むのはこれで何度目だろう。
気付けばこの店に入ってから3時間以上が過ぎていた。
「それにしても男二人っきりで飲むってのもそろそろ限界だな。どうせマチともこの近くで飲んでるだろうし。
よーし!一丁電話でもしてみるか ? ! 」
ウボォーはノブナガの意見も聞かず携帯を取り出すとマチに電話をかけた。
『・・・・プルルルルル・・・・プルルルルル・・・・』
マチは着信表示画面を確認すると大きく溜息をついた。
「何か用?」
電話に出るなりマチが言う。
「お?相変わらず冷たいリアクションだな。ガハハハハ!」
ウボォーは大好きなビールを飲んでいるせいもあって上機嫌だ。
「・・・だから何の用?」
冷めた口調は更に続く。
「集合だ。」
「はぁ ! ? ? 」
「15分後と一緒にムーンライトパークだ。」
「ちょっ・・・」
「時間厳守だぞ!」
ウボォーはマチの言葉をさえぎるように言った。
「何 ? ! 突然かけてきて何言ってるんだよ ? ! 」
「細かいこと言うな!ガハハハハ ! ! ! 」
「ちょっ・・・ ! ! 」
『ブチッ!・・・・・・・ツー・・・・・・ツー・・・・・・ツー・・・・・・』
「ウボォーのヤツ・・・・。」
あきれ返り言葉を失うマチ
「どした?」
はマチの放心状態を見て笑いながら言った。
「ウボォーのヤツが15分後にムーンライトパークに集合だってさ。」
「そっか。もうちょっとゆっくりしたかったね。」
久々の再会を楽しんでいたは少し寂しそうな顔を見せた。
「も一緒にだってさ。」
「私も ? ? 」
話が見えずにキョトンとする
「どーせ集まって飲み直すんだろ。」
「あぁ!そういう事ね・・・。」
「随分飲んでるけど大丈夫?」
「まだまだ大丈夫♪」
「とにかく時間に遅れるとウボォーうるさいから出ようか?」
そう言うとマチはゆくっり立ち上がった。
「・・・・・って、何で私がアイツの勝手な命令に従わなきゃなんないんだよッッ
? ! 」
「まぁまぁ・・・。」
は納得いかない様子のマチをなだめながらレジへと向かった。
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