企み




「パク!ちょっといいか?」

「?・・・・えぇ。」

久々の大きな仕事を終えアジトに到着し車を降りるとフィンクスが何故かパクノダを呼び止めた。



「あれ?パクとフィンクスは?」
二人の姿が見あたらない事に最初に気付いたのは以外にもシズクだった。
「あー、あの二人ならアジトに入る前に出掛けたみたいだけど?」
シャルナークが答えた。
「ふーん・・・・。そうなんだ?」
「何であの二人がって顔だね。」
シズクの顔を見てシャルナークが言った。
「んー。何だか以外かな?って。」
「そんな事ないと思うけどなぁー・・・・。
「 シャルナークはそう言うと含み笑いをした。




フィンクスとパクノダは他のメンバーの目を気にするようにアジトから少し離れた場所へやって来た。


「何か用かしら?」
パクノダはいつもと変わりない様子で聞いた。
「何だよ?怒ってんのか ? ! 」
パクノダのいつも通りの表の顔の反応にフィンクスが焦る。

「何の事かしら?」

「分かったよ!俺が悪かった! !」
頭を下げその上で両手を合わせて謝るフィンクス。

「・・・・いいわ。」
そんなフィンクスの姿を見てクスリと笑うパクノダ。

「けどよぉ・・・・・こうやってあいつ等隠れてコソコソ会うってのもそろそろ限界だろ?」
フィンクスはパクノダの機嫌が直って安心すると今度は愚痴を漏らした。
「私達の事を知って他のメンバーが気を遣うよりはこのままの方がいいんじゃないかしら?」
「あいつ等はそんなタマじゃねぇだろ?」




この二人が付き合い始めたのは三年前の事だった。




付き合ったばかりの頃、他のメンバーに言い出す機会がなかなか見つからずあっという間に 半年が過ぎ、
“今更”という気持ちもあり言うチャンスを逃してしまった二人はコッソリと会うのが “いつもの事”になってしまっていた。
それに加えパクノダは自分達の事で他のメンバーに気を遣わせたくないと強く思っていた。



「・・・・そうかもしれないわね。それで用件は?」
これ以上、言い合っても余計に拗れ時間がかかると判断したパクノダは上手く話をすり替えた。

「早く戻らないと怪しまれるってか?」
パクノダの聞き流すような態度に不満そうなフィンクス。

「まだアジトに戻ってやらなきゃならない仕事が残ってるの。」
子供をあやすようフィンクスをなだめるパクノダ。


「はぁ〜・・・・・・・・。」
フィンクスは大きな溜め息をついた。
「・・・・・・・。」
首を傾げるパクノダ。

「これじゃあ、せっかくのクリスマスも台無しだな。」
ポケットに手を突っ込み地面に転がる石を蹴るフィンクス。

「!」

フィンクスの意外な発言に驚きを隠せないパクノダ。


「パク、俺がこんな事を言うなんて驚き★とか思ってんだろ?」

「えぇ・・・。かなり・・・ね。」
苦笑いをするパクノダ。

「そりゃ悪かったな!けどよぉ・・・もう俺達が付き合って三度目のクリスマスなのに  
“いつも通り何も ありません” じゃ何だろ?お前だって女だし俺だってちょっとは恋人らしい事でもしてやりたいと思ってな。」



ついさっきまでパクノダにとって子供に見えていたフィンクスはいつに間にか大人の男になっていた。



「クリスマス・・・。すっかり忘れてたわ。」
「そんな事だろうと思ったよ・・・。毎年、俺等には関係のないイベントだしな。」

「・・・・・そうね。」
パクノダは今日までの様々な事が一気に頭に思い浮かんだ。


ポケットの中に手を突っ込んだままフィンクスはゴソゴソ音を立て何やらやっている。

「寒いわね。」

気が付けばちらほらと空から雪が降りてきている。

「雪か・・・・。」
空を見上げながら呟くフィンクス。

二人の間にロマンチックなムードが漂う。



「ホラよっ!」
フィンクスはポケットから手を抜き出すと小さな箱をパクノダに投げ渡した。

「 ? ! 」

その箱をキャッチしたパクノダは思いがけない出来事にどうしていいか分からない様子。

「驚いただろ?」
パクノダの反応に喜びを感じながらフィンクスは言った。
「いつの間に?」
「それは言えねぇーな。とにかく開けてみろ。」
そう言われるとパクノダは震える手を抑えながらゆっくり箱を開けた。



「・・・・・・・。」



じっと箱の中を見つめるパクノダの瞳には薄っすらと光る何かが見える。


「柄にもなく買っちまった・・・。」
顔を赤らめるフィンクスにそっと抱き寄るパクノダ。

「おいおい、今ここじゃヤバイしだろ?雪降ってるし出来ねぇーぞ??(笑)」
「・・・・・バカ。////」


フィンクスはパクノダの髪に舞い降りた雪を優しく手で払い除けた。

「付けてみろよ。」

パクノダは静かに頷くと箱の中から大きくはないが女らしくおしとやかに輝く指輪を大事そうに 取り出すとフィンクスに手渡した。

「フィンクスが付けてくれる?」
そう言ったパクノダは恥ずかしそうに目を伏せた。

「・・・俺がか?・・・き、緊張するな。(汗)」
微かに震える指先で必死にパクノダの指に指輪をはめようとするフィンクス。




ガァーンッッ ! ! !




二人の甘いムードを一転させる大事件が起きた。



「・・・・・・・・小さいわね?」

「あぁ・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「悪い ! ! サイズ分かんなくて適等に選んじまったから・・・。」
こうなる事は予想してはいたが相当なショックを隠せないフィンクス。
「気持ちだけでも充分だわ。本当にありがとう。」
サイズは合わなかったものの、とても嬉しそうな笑顔は幸せ一杯パクノダ。

「・・・・・・・・・。」

フィンクスは少しの間、何かを考えると自分の首にぶら下がるネックレスを外した。

「それじゃあ指にするのは無理だ。けど、こうして鎖に繋げれば失くさずいつも身に付けていられる  ってわけだ。」
フィンクスはさっきまで付いていたトップを外すと代わりに指輪を通した。

「最高ね。」

パクノダはニッコリ微笑むとフィンクスに背を向けた。
「指輪がネックレスになっちまったがな。」
フィンクスは静かにパクノダの首にネックレスを回すとかじかんだ手で何とか付けてあげる事が出来た。


「・・・・・・・・・・・・・・。」
パクノダは背を向けたまま首にはめられたネックレスの指輪を嬉しそうに見つめている。

「パク?」
なかなかこっちを見ないパクノダに声をかけるフィンクス。
「どうかしら?フィンクスから離れられなくて鎖に繋がれた私みたい?」
「何だソレ? !」
「冗談よ。」
静かに笑うパクノダ。
「俺としては見える場所に付けててくれりゃあ有難いんだけどな。」
フィンクスは腕を組むとニッと微笑んだ。
「そうね。これで嫌でもみんなには分かるわね。」
「そこなんだよな!俺等二人がアジトに戻ってない事はもう他の奴等は当然気が付いてるだろうしな。
 アジトに戻ってお前の首にそんな物がぶら下がってりゃあ相当なバカじゃない限り気付くって訳だ。
 今更だけど隠してたって事、言う手間も省けるし結果オーライでいい考えだろ?」

フィンクスは少し寒そうにして話を聞いているパクノダを優しく包む。


「・・・・それも悪くないわね。」


まんまとフィンクスの口車に乗せられてしまったようにみえるパクノダ

「そろそろ戻るか?」
「えぇ。」

二人は肩を寄り添わせながらアジトへ歩き出した。




「それにしても俺の企みにあっさり乗ったな。」
「ふふふ・・・。本当は箱を開けて指輪を見た時にこんな事だろうと思って覚悟はしてたもの。」

フィンクスの企みはパクノダにはお見通しだった・・・・・。





★ ハッピーメリークリスマス ★






back