道のり




「ありがとうございます。お会計¥7880になります。」


「ここは私が出すよ。」
マチはサッと財布を取り出すと素早く会計を済ませた。

「ありがとうございました〜!」

行き場のなくなってしまったの財布は手に持たれたまま・・・。
「出るよ!」
あまりのマチの素早い行動に呆然としていたは、その声で我に返る。
「う、うん・・・。」



店を後にしたマチとはムーンライトパークに向かって歩き出した。



「マチ?」
「何?」
「ご馳走さまでした・・・。」
「な、何?改まって・・・。」

「だって・・・・。」
は少し考えるようにしてマチの顔を見た。

「だから何?」
煮え切らないの態度に苛立つマチ

「・・・・・・・マチがおごってくれるなんて・・・・。」
「は?」
「珍しいから・・・。」
「アンタ喧嘩売ってるの?」

ムッとするマチの顔をはジッと見ている。

「わははは!そんなことで怒らないでよ!本当に珍しくてビックリしてるんだから★」
「本当に珍しいって・・・。それフォローになってないけど?」
呆れた様子でマチが言った。
「あら・・・?そうだっけ?ごめーん!でも、ありがと。」

「・・・・今日は私が急に誘ったんだから出すのは当然だろ?」
から出た“ありがとう”という言葉に照れ隠しをするようにマチが言った。


二人が大きな交差点に差しかかろうとした時、歩行者信号は赤に変わった。


「はぁー・・・。それにしても久し振りにゆっくり出来たって感じ!」
夜風に髪をなびかせながらは両腕を上げ気持ち良さそうに伸びをしながら言った。

「・・・アンタ全然連絡取れなかったからね。」
「あは・・・はは・・・。やっぱり?」
痛いところを刺されたようにバツの悪そうな
「・・・ホラ!忙しかったし?」
がその場しのぎで口にした言葉には無理があった。

「連絡取れない位この何年か忙しかった訳じゃないだろ?」
マチは赤信号を見つめたままに聞いた。
「ははははー・・・・。結構、忙しかった・・・っていうか・・・。」


信号はを助けるように青に変わり二人はまた歩き出した。


が言いたくないなら私は無理には聞かないし何で連絡取れなかったか位は検討はつくからね。」
「あははは・・・。マチは勘がいいからね・・・。」
「団長と何があったか知らないけど私等は関係ないだろ?」
「エヘ!ごめん ! ! やっぱりマチには隠し事できないねー!」


そう言い終えたは前方に見える自動販売機まで駆けていった。


「マチーッ!何か飲むぅ〜?」
自動販売機の前ではバックを振り回しながら大きな声で叫んでいる。
「・・・・・・・・。(のヤツ、上手く逃げたな。)」
「おーい!マチってば聞いてる〜 ? ? 」
更に大きく両手を振り回しながら叫ぶ
「・・・・・・・・・・。」


「マチ遅いよ!お茶でよかった?」
ようやく自販機の前にやって来たマチにはお茶を手渡した。
・・・さっきより元気になってきてない?」
「そ?」
「・・・・・・・・・・。」
気の抜けた様子のマチに言葉はない。
「よーし!」
は気合を入れるように突然、意味不明な掛け声を発した。
「?」
「まだまだ飲む ぞぉー ! !
オーッッ ! !
は大きな声で叫ぶと両手を高々と上げた。



『ドサ!・・・・ドサドサ・・・・バサ・・・・』



「あ、あれれ・・・?」
が両手を高々と上げた瞬間、バックの中身は見事にの頭上に散らばり落ちた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
マチは冷ややかな視線を静かに送っている。

「バック・・・持ったまま・・・だっ・・・た・・・。」

「・・・・・馬鹿としか言いようがないわね。」
「見てないでマチも拾うの手伝ってよ・・・。」
は散らばったバックの中身を必死になって拾っている。

「何でアンタのバックの中、こんなに物が入ってんの ? ! 」
ブツブツ言いながらもに言われた通りバックの中身収集を手伝うマチ
「もぉ〜!何でいきなり落ちてくるの ? ? 信じらんなーい!」
はマチの言葉も耳に入ってこない程、一人で騒いでいる。


「プッ!」
その様子を見ていたマチが突然噴出すように笑った。

「ムムッ!何、笑ってるの ? ! 早くマチも手伝ってよぉ〜 ! ! ! 」
可愛すぎ!外見と中身ギャップあり過ぎだって。」
笑いながらマチはにそう言った。
「うそ ? ! 私ってギャップあり過ぎなの ? ? 」
「自分で気付いてないところがまたイタいわね・・・。」
「・・・・・・・・。」
は反論することも出来ず、いじけ気味に落ちていた口紅を拾った。



「終わったぁ〜!」
散らばり落ちた全ての物を拾い終えたの顔は何故か達成感で満ちている。


「アンタって最高!」
そんなを見てマチは、また笑い出した。
「まだ笑うか?」
はマチを横目で見ながら言った。
「笑うつもりはないんだけど・・・・プッ!」
「ほら、また!」
「でもさ、団長がなんでのこと好きになったか何となく分かった気がする・・・。」
マチは少し寂しそうな顔をすると、そう言った。
「うーん・・・。自分ではよく分かんないけど?」
「羨ましいよ・・・アンタがさ・・・。」
マチはポツリと呟いた。
「何で ? ? 」
「私は素直でもなければ、こんな性格で可愛げは無いし女らしくもないだろ。」
「うーん・・・。でも、マチは可愛いし、女らしくないなんて事ないよ?ただ表現するのが下手なだけでしょ?
 それに私が今、こうして変われたのもマチ達がいたからだし・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「マチはそのままでも充分可愛いって!私が男だったら絶対惚れてるね!」
はニッコリ笑ってマチに言った。
「・・・・・ありがと。」
マチは恥ずかしそうに顔を伏せた。

「お礼を言わなきゃいけないのは私の方だよ。マチ、ありがとう・・・・・・。
 おごってくれて・・・・。」
は冗談ぽくそう言うと大きな声で笑った。



「あ!あ゛ーっっ ! ! ! マチ、早くしないとウボォーに怒られちゃうよ!」
そう言うとはムーンライトパークに向かい走り出した。

・・・・目の前、ムーンライトパークなんですけど・・・。」
マチの声はには届いていなかった。




今宵の宴はまだまだ続く・・・・。




「マチとのヤツ遅いなぁ・・・。何してんだ ? ? 」
                          (byウボォー)







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