眠れない夜が続く・・・・・。
この気持ちは一体、何なの?
『死神』 の “ 私 ”
『ターゲット』 の “ フェイタン ”
それ以外は何もなかったはずなのに・・・・・。
どうしてこんなにも心が落ち着かないの?
誰か・・・教えて・・・・・・・。
黒のナミダ (後編)
初めてフェイタンと言葉を交わした日から私の中では今までに感じたことのない感情が生まれていた。
“ 可哀想? ”
そんな気持ちではない。
“ 同情してる? ”
そんなことない・・・・。
私は数日内にはアイツを死に追いやる 『死神』
アイツは私にとって、ただの 『ターゲット』 でしかないのだから・・・。
・・・・だってコレがフェイタンの運命なんだから。
「・・・・? ・・・・!」
「 ! ! ・・・・・な、何 ? ! 」
「最近、何かあたか?」
「ん ? ? べ、別に何もないけど・・・・?」
「そろそろ冷蔵庫の中、寂しくなてきたね。」
「あー・・・・・・そうだったね・・・・。」
明らかに上の空でフェイタンに受け答えする
「・・・・・は此処から出れない言てたね。」
「あ、うん・・・・。」
「の不味い料理も限界ね。久し振りに美味しいもの何か買てくるよ。」
「・・・・うん。」
「帰てくるまで休むといいね。」
フェイタンはいつもの様子とは違うを気遣うように言うと廃墟を後にした。
“ 私がフェイタンを好き? ”
そんなはずない・・・・。
“ でも、フェイタンを殺れる? ”
だって、コレが私の仕事で・・・・・・・。
『プルルルル・・・・・プルルルル・・・・・プルルルル・・・・・』
「・・・・・もし・・もし?」
「か?」
「 ! ! ! 」
「期日まで残りわずかだが、初仕事うまくいきそうか?」
「・・・何も問題ないです。」
「そうか・・・ならいいんだが?」
「他に何か?」
「もし、期日を守れなかった場合・・・いや、ターゲットを逃がしてしまった場合、お前はどうなるか・・・分かっているな?」
「・・・何が言いたいんです?」
「、お前が 『ターゲットと親しげに生活している』 という情報を耳にしてな。」
「そんなの・・・・相手を油断させる為です。」
「仮にお前が “ 出来ない ” と言うなら他の奴と 」
「大丈夫ですから!ターゲットに悟られると困るんで、もう電話しないで下さい。」
はそう言うと電話を一方的に切った。
“ 仲良く生活? ”
これの一体どこが?
“ 私にフェイタンは殺れない? ”
何で、そんな事を言われなきゃいけないの ? !
何も・・・・
何も考えたくない ! !
フェイタンに私の正体を知られるわけにはいかないんだから・・・・・。
は落ち着いて休んでいる気分ではなかった。
じっとしていれば嫌でも頭の中に浮かぶ気の迷い。
何か気を紛らわせなければフェイタンに気付かれてしまう・・・。
そんなわけにはいかない。
その一心で調理場へ向う。
は無心で冷蔵庫を開けると随分と少なくなった食糧・・・・。
フェイタンと共に過ごした数日間、誉められたことは無くとも喜ぶ顔が見たくて料理をしていたことが
冷蔵庫の中身を見れば思い出される。
いつも通りにしなくちゃ・・・。
その想いがを奮い立たせる。
冷蔵庫から残った材料を取り出すとは、まだまだ慣れない手付きで料理を始めた。
「出来た!今日こそはフェイタンの口から美味しいって言わせてやるんだから
! ! 」
夢中で料理をしているうちには平常心を取り戻すことが何とか出来た。
『カタ・・・・カタン』
「帰って来た!」
は小さな音を聞き逃すことなく聞き取ると急いで廃墟の入り口へと駆けた。
「おかえり!」
「バタバタうるさいね。象かと思たよ。」
「ひっどーい!そんなに太ってないもーん ! ! 」
「・・・元気なたね」
フェイタンはいつも通りのを見て少し微笑んだ。
「・・・・ごめんなさい。」
は真剣な表情でフェイタンに言った。
「どうして謝る?」
「・・・・・・・・・・今日は美味しいもの買ってくるってフェイタン言ってたのに・・・作っちゃったから・・・・・?」
「 ! ! ! ! 」
二人の顔が同時に笑顔になった。
「半分こ。」
はフェイタンの手に持たれていた買い物袋を半分だけ持つと調理場へと歩き出した。
「は女の子ね。だからワタシ持つからいいよ。」
後ろからの手にある買い物袋にフェイタンが手を伸ばした。
「じゃ、またまた半分にしたら?」
二人の間には1つの買い物袋が揺れる。
「何か恥ずかしいね。」
照れたようにフェイタンが言った。
二人並んで歩く調理場への長い廊下
いつまでも、この廊下が続いていればいいのに・・・・。
の気持ちに答えは出ていた。
今日が 『最後の晩餐』
「珍しくいい匂いがするね。」
意外な程のいい香りにフェイタンが鼻を効かす。
「ようこそ、キッチンへ・・・。」
初めて共に食事をした小汚いテーブル台は真っ白な布で被われ並べられた料理
一輪の花は高価な花ではないが誇らしげに飾られている。
その横にはキャンドルライト・・・・。
その光景はまるでどこかの小さなレストランのようだ。
「さ!フェイタン座って。」
が椅子を引く。
「ビックリしたよ・・・。」
「でしょ?頑張ったんだから!味は保障出来ないけどね。」
フェイタンの前にが座った。
「それでは・・・乾杯!」
綺麗なグラスなどあるハズもなく、曇ったグラスには水道水。
「水ね、コレ・・・。」
「文句は言わない!とっとと食べる!」
「分かたよ。」
「 ! ! 」
料理を一口食べたフェイタンの動きが止まる。
「な・・・・何?」
「、これ・・・美味しいよ。」
「本当 ? ! 」
「本当ね。」
フェイタンの表情はキャンドルライトのせいでハッキリと見えないが少し照れたように目を逸らした。
「・・・・・・・・・・・・。」
の瞳からは大粒の涙が零れた。
「泣いてるか?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「何か変なこと言たか?」
「・・・・ううん、嬉しかったの・・・・・。」
「ワタシも嬉しいよ・・・。今日もの不味い料理思てたからね。」
「何それー ? ! ? ! 」
「少し冗談言っただけで、何故そんなに怒る?分からないね・・・。」
こうして『最後の晩餐』は終った。
深夜、はこの日も眠らずに見上げていたのは窓から見える月。
部屋の隅にもたれ流れる雲と煌々と光る月を黙って眺めていた。
反対側の隅で横になるフェイタンからは微かな寝息が聞こえてくる。
はこの時を待っていた。
ゆっくりと立ち上がると月明かりに不気味に光る鎌が現れた。
一歩・・・・・
また一歩・・・・
静かにフェイタンに近寄る
目の前には、初めて此処で会った時に見た可愛い寝顔・・・。
自然にの瞳からは涙が流れ落ちた。
「・・・・?」
零れた涙はフェイタンの頬に落ちた。
「また泣いてるか?」
目をこすりながらフェイタンは立ったままのを見た。
「・・・・・・・・・・それ何か?」
フェイタンが目にしたのはの手に握り締められた鎌。
「こんな夜中に何の遊びのつもりか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
からの答えは無く、ただ涙だけが溢れ出す。
「もっと傍に来るといいよ。」
フェイタンは起き上がるとの腰に手を回し引き寄せた。
「私には・・・・・・・・・・出来ない・・・・・。」
の手から鎌は消えた。
「フェ・・・タン・・・・・ごめ・・・」
の涙は止まることなく、それでもは必死に何かを伝えようとする。
「わ・・・たし・・・・・・・・ほんと・・・・・は・・・」
「知てたよ。」
「 ! ! ! ! 」
「知てた言たら嘘ね。そうかな?思てたよ。」
「じゃ、なん・・・で?」
「昔、読んだ本に出てきた 『死神』 の格好そのものだたね。本当にいる思てなかったよ。」
「・・・・・・・・ごめ・・・ん・・・・なさ・・・・・」
フェイタンはゆっくりとの頭に手を伸ばした。
「になら殺されてもいい思たよ。」
静かな廃墟の中・・・・
ゆっくりとの体から青白い光が放つ
「フェイタン・・・・・・」
「 ? ! 何故、光ってる?」
「今までありがとう・・・・・。」
「何言てるか ! ? 」
「愛してる・・・・・・。」
『死神』 任務に失敗した場合、ターゲットを逃してしまった場合、ターゲットに正体を知られた場合
人間に恋をしてしまった場合・・・・・・
その姿は消える
ねぇ、神様・・・・・・
もしも、この世の中に本当に神様がいたとしたら
次に生まれてくる時には、『死神』 なんかじゃなくて 『人間』 として・・・・・
『人間』 として生まれてフェイタンと恋がしたい・・・・・・・。
この世の中に神様がいたとしたら、あなたは何を祈りますか?
END
****あとがき****
15000打、お礼&感謝祭ドリー夢後編、無事完了しました!(パチパチパチ・・・
皆様のお力をお借りして、ここまで辿り着いたことを本当に感謝しております(涙
フェイタン人気に圧倒されつつ、尚且つプレッシャーをヒシヒシと感じながら
何とか書き上げることが出来たのですが、出来栄えはいかがだったでしょうか?
私自身が本当に何もかも初めてな挑戦だった為、至らない部分もあるかと思いますが
自分の中では、精一杯頑張った結果の末に出来上がった作品になった事を満足しております。
(↑自己満足にて終了かよ・・・・)
コレを機にこれからも頑張っていきますので、
この先もどうか 『幻影ロマンス』 と共に管理人を宜しくお願いします。
最後に投票して下さった多くの方々、お越しになって下さった多くの方々へ
本当に心より感謝しています。
皆様、ご協力ありがとうございました!(礼
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