もしも・・・・この世の中に神様がいたとしたら、あなたは何を祈りますか?
黒のナミダ (前編)
私の仕事は人の命を絶たせるものだ。
簡単に説明をすれば 『死神』
大きくカーブし不気味に光る刃先の付いた鎌を持ち真っ黒の衣装で身を包む。
普段は鎌を出したりしない。
ターゲットが死を迎える瞬間に奴等の首を切り落とす時だけに現れる。
だから普段は “ クチナシ ” オタクか “ 魔法使い ” にでも憧れる変な奴に見えているだろう。
まるで、ベテランのような口ぶりの説明も私が言ってしまえば、まるで説得力が無い。
『死神』 って言っても実はまだ新米・・・。
しかも、今度の仕事が初仕事だったりもする訳で。
そんな私のターゲットがアイツだなんて・・・。
でも、弱音なんて吐いてられないじゃん?
何としてでも初仕事を成功させなくちゃ!って心意気だけは一人前だったり。
新米って言えども、それなりの情報も持ってるし。
独自の情報網を駆使して一丁、いっときますか!
『・・・ッ・・・・・・コツ・・・・・・コツ・・・・・・ギィ・・・』
「ふーん。ココが次にあいつ等が使う仮宿(アジト)ね・・・。」
ヨークシン中心部から離れた場所にある廃墟。
此処には何棟ものビルが立ち並んでいるが、今では人っ子一人いない。
その姿はまるでゴーストタウンだ。
私が得た情報によるとターゲットはこの廃墟にやって来る。
けど、一つ問題があるのよね。
仲間と来られちゃマズいのよ・・・。
私の特技でも使えば何とかならないことは無いけど・・・。
「えっと・・・。ターゲットと一番親しそうなメンバーは・・・・」
袖口から取り出したのは 『情報メモ』
「親しい奴・・・・あっ、あった!」
メモ帳を軽快にめくった先にはビッシリと書かれた交友関係があった。
「フィンクス・・・あー・・・・。あの変な被り物の人ね。」
ポケットから取り出した携帯電話を手にする。
『ル・・・・プルルルル・・・・プルルルル・・・・ガチャ』
「 ! ! 」
「こんな朝から何か用あたか?」
「よぉ、元気か?」
「用ないなら切るね。」
「待て待て、集合時間に変更が出た。」
「聞いてないね。」
「団長からの伝言だ。『今からすぐ向え。各自現地集合。』だとよ。」
「分かたよ。」
「そういうことだ。」
「はぁ〜。何とか上手くいったわね・・・。」
私の特技は一度聞いた声は忘れる事なく真似ることが出来るというもの。
まさか、こんな特技が役に立つなんて思ってなかったからラッキーだったかも。
ターゲットの首を刈るチャンスは1週間。
相手があの幻影旅団のメンバーだなんて本当にツイてない・・・。
「さてと・・・ターゲットが到着するまで充分休んでおかなきゃね。」
「おい、お前こんなとこで何してる?」
「・・・ん・・・・・・んん・・・あと・・・5分・・・・・5分でいいか・・・ら・・・・。」
「完全に寝ぼけてるね。ささと出てた方が身の為ね。」
「・・・・・・・?・・・・・・ ? ? ・・・あーーーーーーーーーーッッ ! !
! ! 」
さっきまでの夢見心地は一瞬で消え去った。
「目、覚めたみたいね。分かたらささと出て行くいいね。」
「あ・・・あの・・・えっと・・・・その・・・。」
「聞こえてないか?」
「あ!そう ! ! 変な人に追われてて!私・・・だから・・・その・・・あの・・・。」
「お前何言てる?」
「だ!だから・・・少しの間・・・匿ってもらえま・・・せん・・・か?
(ギャーッッ ! ! 私ってば何訳分かんない事言っちゃってるのよ!)」
「匿う?何ソレ。必要ないね。」
「そ、そんなぁ〜。ほ、ホラ。えーっと・・・(理由・・・理由・・・)ここここ・・・殺される・・・かも?
(もぉー最悪!どもってるし・・・。)」
「関係ないね。」
「で、でも・・・(あーん!こうなったら泣くしかない?)お願いします・・・。何でもしますから・・・・。
(涙が出ないーッッ ! ! )」
「・・・・・・何でもする言たね。」
「はははは、はい〜 ! ! 」
首を大きく縦に振るその姿は壊れた玩具のようだ。
「分かたよ。後から此処に仲間来るね。そしたらお前、すぐ出てく。それ条件ね。」
「はい。もぉ何でもいいです・・・。えっと・・・あの・・・・。」
「まだ何かあるか?」
「い、いえ!あああ、じゃなくって・・・お名前・・・何と呼べば・・・・。」
「呼ばれるコトないね。」
そう言うと小柄な男は部屋の隅へそそくさと歩き出した。
「あ!私・・・の名前は・・・・だから!」
男は何も答えることなく部屋の隅に腰を下ろした。
私は何とかターゲットの傍に居座ることに成功した。
寝起きで頭が回転してない時にターゲットが現れたのはラッキーだった。
相手は私の事をただのバカだと思ってるだろーし。
結果的に油断させる為にはバッチリって言って良い程の会話だったと思う。
何の会話も無くただ時間だけが過ぎていた。
男は黙って本を読み続けている。
こんな廃墟の中に時計なんてあるワケもなく、外から入り込む日の光を見る限りでは
夕方近くだということが分かった。
「(ヤバいなぁ・・・。何とかしてもう1度ターゲットに電話しなきゃ怪しまれるかも・・・。
来るハズの仲間が来ないとなれば、この作戦は全て水の泡・・・。)」
無言の時はただ長く感じ、いつからかその重圧が焦りに変わる。
「あ、あのー・・・。」
男は少し顔を上げたが、またすぐに下を向くとさっきと変わりなく本を読み続ける。
「お腹・・・・空きません?」
「・・・・・今、思い出したよ。朝から何も食べてないね。」
「あ!私、何か作ります!」
「好きにするいいね。」
そう言うと男はまた読書に戻った。
「ちょっと待ってて下さいね!」
足早に部屋を後にし食糧の置いてあるこの廃墟の中では台所となる場所へやって来た。
「まずはターゲットに電話・・・。」
『・・・・プルルルル・・・・プルルルル・・・・プルルルル・・・・プルルルル・・・・留守番サービスセンターに・・・・』
「留守電?」
同じ建物の中でさっきまで本を読んでいた男が電話に出ない。
嫌な予感が脳裏を横切る。
「まさか気付かれた ? ! 」
慌てて男のいる部屋に戻ると、そこには小さく丸まって横になる男の姿・・・。
「うそ ? ! 何で倒れてるのよ ? ! 」
急いで駆け寄ると男の顔を覗き込む。
「スー・・・・・スー・・・・・スー・・・・・」
「寝てるし・・・。」
しばらくその寝顔の意外な可愛さに見とれて、ハッと我に返る。
安心したかのように大きくため息をつくと小走りで台所へ戻った。
「とりあえず、留守電入れたし大丈夫そうね。」
そう言うとは冷蔵庫に入れておいた玉子を取り出すと慣れない手付きで料理を始めた。
『ガタガタ・・・ガタ・・・ガチャン!・・・・・・バッリーンッッ ! ! 』
「ふぅ〜・・・・・。完成 ! ! 」
「凄い音聞こえたよ。静かになたから死んでる思たね。何してる・・・・か・・・・
? ! 」
流し台には山になった洗い物、床には皿が割れ破片が飛び散っている。
「あ・・・はは・・・。夕飯できました・・・?」
テーブルらしき台の上には皿に盛り付けられた料理。
玉子焼きに形は無く、魚は丸焦げ状態。
お世辞にも美味しそうとは言えない程の料理だ。
「こんな料理見たことないね。ワタシまだ死にたくないよ。」
「・・・・・でも・・・・・・・・。」
「食べれる物ないね。」
「私・・・・アナタの為に一生懸命作ったから・・・見た目は悪いかもしれないけど・・・・・。」
「・・・・・・・・フェイタン。」
「え?」
「名前さき聞いたね。フェイタン言うよ。ツベコベ言わずに座るといいね。」
フェイタンは視線を合わすことなくそう言うと静かに席へついた。
「いっただっきまーす!」
「「ぐふっ・・・・。」」
二人は同時に料理を口にすると今までに食べたことのない未知の味に咽を詰まらせた。
「何入れたらこんな味するか?」
「・・・・・・・・・・。」
人の為に何かしてあげることなど今までのにとってある訳も無くフェイタンの一言に深く傷ついたのか
の瞳には薄っすらと涙が浮かんでいる。
「明日からはもと練習するといいね。」
フェイタンは慰めるように言うと一気に料理を平らげた。
「慣れると意外に食べれるね。もささと食べて寝るといいよ。」
フェイタンはそう言い残すと部屋を出ていった。
は今までに出逢ったことのない気持ちになっていた。
その日の夜、は眠れずにいた。
窓の外に見える美しい月夜のせいなのか、頭をフル回転させたせいなのか。
不器用な優しさを持つフェイタンのせいなのか・・・・。
この時の二人には、これから起こる出来事など知る余地もなかった。
****あとがき****
15000打、皆様のおかげで辿り着くことが出来ました!(パチパチパチ・・・
本当に感謝しております!
サイトを立ち上げた当初は誰か見てくれる人がいるんだろうか?などと本当に不安で・・・。
まさか、こんなに沢山の方が来て下さって投票にもご協力して下さるとは思っていなかったので
本当に感謝しています。としか言い様がありません。
こんな在り来たりの言葉しか見つからなくて申し訳ありません(泣
今回、投票結果で見事1位に輝いたフェイタン夢、初挑戦デス。
初めてなだけに少しお時間を頂いてしまった事をこの場を借りてお詫び致します。
考えれば考える程、難しくなっていく私の能力の低さで限界ギリギリまで頑張りました!
結局、上手くまとまらずに前編と後編に分けてご覧いただくこととなってしまいましたが、
後編の方も読んで頂ければ本望です!><;
これからも『幻影ロマンス』共に管理人をどうか宜しくお願い致します。
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