私が念願だった幻影旅団に入団できたのは、たった半年前のことだった。


それは、大きな仕事を終えて痛手を負った旅団メンバーを入団希望だった私が倒したことで
私は今、ここにいることが出来ているのだ。


結果的には入団できた事には変わりがない。
でも、それは本当に私が納得できる形での入団方法ではなかった。







『私は甘えているのかもしれない・・・。』







その気持ちは私を迷いの中へ誘い込んだ・・・・・・・。




























『もっと・・・もっと・・・高いところへ・・・・・・・・・・。』




































『もっと・・・もっと・・・強くなりたい・・・・・・・・・・。』


































希望




「あら・・・、今日はいつもの元気がないのね?」



入団直後から毎日うるさい位の元気さを見せていたが珍しく沈んでいるのを不思議に思った
パクノダが気にするかのようにに声を掛けた。


「・・・・・・・・・・。」


?」


「・・・・・・・え ? ? わ、私 ? ! 」


周りの声や音にも気付かなかったのかは驚いたと同時に我に返った。


「・・・・・何か考え事?」

「・・・・・・そんなんじゃ・・・ないけど・・・・・・・。」

自分の心の中に植えられた小さな黒い種が毎日、日を重ねるごとにどんどん大きく成長していっていることに
は気付いていた。

「何でもないって感じには見えないわよ?」


「・・・・・・・私・・・・・・・。」

この気持ちを誰かに聞いて欲しかった。
そう思っていたことに間違いはない。
あんな形で入団していても現在、幻影旅団のメンバーである自分がそんな弱さを見せてしまうこと・・・。
それは、同時に自分が弱いと認めてしまうようでは誰にも相談することはなかった。


「どうしたの?」
パクノダはに優しく問う。


「・・・・・・・・・・・・・。」

「少し向こうで話さない?」

「・・・・・うん。」

まるで何かに吸い込まれるようには答えていた。




























『ギィ・・・・・・』



仮宿の中にある応接間のような一室に二人は無言のまま入った。



「今日だけじゃないわね?」
パクノダはその部屋の奥にある冷蔵庫から缶ジュースを取り出し室内中央あるテーブルの上に置くと
ソファーに座った。

「・・・・・・・・・・・・・・。」

「飲まない?」
パクノダは缶ジュースのふたを開けるとに差し出した。

「・・・・・・・・・・・・・・。」

「最近、の様子がおかしいってメンバーの中でも心配してたのよ?」
パクノダは差し出した缶ジュースをテーブルの上に戻すと心配そうな顔を見せた。

「え?みんなに分かる程・・・私、落ち込んでるように見えてた?」
パクノダだけではなく他のメンバーにまで自分の気持ちを知られてしまったようでは恥ずかしかった。


「元気がないのはみんな言わなくても気付いているわ。これでも私達はあなたの事を心配しているのよ?」

そう言うとパクノダは優しく微笑んだ。


「パク・・・・・・・・・・・・・・・・・・私・・・・・・。」

思わぬ優しさに・・・パクノダの優しい微笑みに安心したは熱く込み上げる自分の中の気持ちを
抑えることが出来なかった。
その表情は今にも泣き出しそうだった。

、こっちに座らない?もっと傍に来て話して?」

温かなパクノダの視線は真っ直ぐにに向けられている。


「パク・・・・・・・ ! ! 」

涙が零れ落ちたはその瞬間パクノダに抱きついていた。

弱い自分なんか捨ててしまいたかった・・・。
そんな風に強く思って追い詰められていたの心の中は何故だかとても温かかった。



「少し落ち着くまで待つわ。さぁ、これでも飲んで・・・。」
さっき差し出した缶ジュースはようやくの手に渡された。

は一口だけジュースを飲むとうつむいたままでいた。

パクノダはそんなの肩を引き寄せると優しく髪を撫ぜた。




「く・・・・・くっ・・・・・く・・・・・・。」




部屋の中にはの色んな気持ちの混じった泣き声だけが響き渡っている。




「ありがとう・・・もう大丈夫。」

涙をこらえながらは言うと更に話を続けた。
「私・・・みんなに比べたら全然ダメで・・・・。あんな形で旅団に入団したけど、ここに居る私って本当に
 必要なのかな?って・・・。こんな気持ちでみんなと一緒に活動していくのが辛い・・・・・。
 でも・・・みんなとも離れたく・・・ない・・・。」

は自分の気持ちを分かってもらいたい一心で溢れる涙を堪えながらパクノダに打ち明けた。




上手く言葉にならない気持ちを何とか分かってもらえるように・・・。





「あなたはまだ若いんだもの。これから先、どんどん強くなる可能性があるから今ここにいられるのよ?」
パクノダはうつむくの両肩に手を置くと覗き込むようにの顔を見た。

「私に・・・強くなれる可能性?」
自分の中にそんな可能性を見出せないでいたはパクノダの意外な言葉に驚き顔を上げた。

「そうね・・・。私達全員が通ってきた道をあなたが今、通過するかどうかってとこにいるんだと思うわ。」

「みんなもこんな思いを・・・?」

「少なくともメンバーの半分は今ののように思い悩んでいるはずよ。もちろん私もその一人だもの。」


パクノダはその頃の自分をに重ねて見ていた。


「これは誰もが通らなくてはいけない道だって私は思うわ。」

「・・・・・・・・・・・。」
はパクノダの話をただ黙って聞いていた。


「・・・今はまだ・・・よく分からないけど・・・もう少し・・・あと少し・・・。」
言葉に詰まる
の言葉を静かに待つパクノダ

「パク・・・ありがとう・・・・・。頑張れそうな気がする・・・。」
は少しだったが表情に明るさを取り戻していた。

「すぐにとは言わないけどが大人になったらきっと分かることが沢山あるわ。今は自分の出来る事を
 精一杯やってみることよ。それからでも遅くないでしょ?」
の少し元気を取り戻した顔を見て安心したようにパクノダは言った。


「私・・・少しでもみんなの役に立ちたい・・・。
 ほんの少しでもみんなと長く一緒に居られるならどんなに辛くても努力する・・・。
 それが今の私に唯一出来ることだから・・・。」

さっきの表情とは打って変わっての顔は希望に満ち溢れていた。


「そうね。その気持ちがあればもう大丈夫よ。」
パクノダはの光り輝く表情につられるかのように新鮮な気持ちだった。


「パク!ありがとう ! ! 私、みんなのとこに戻って元気な私を見せつけて来る!」


そう言うとは元気良く立ち上がり部屋を飛び出していった。



























『もっと・・・もっと・・・高いところへ・・・・・・・・・・。』


































こんなにちっぽけな自分にもきっと何かが出来るはずだから・・・。


そう信じて・・・・・・。
















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