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始まり
5年前、幼かった二人が桜の木の下で再会の約束をして別れた。
そして、あれから5年の月日が流れても約束は忘れることもなく果たされた。
二人は思い出の桜の木の下で春の暖かな陽気に包まれてゆっくりとした時間を過ごした。
桜舞う空が赤く染まる頃、頬に落ちた桜の花びらを取ろうとし手を伸ばしたクロロはにそっと優しくキスをした。
「 ! ! ! ! ! ! 」
思ってもいなかった出来事に驚いたは目を見開き身を思いっきり後へ引いた。
「・・・・嫌だったか?」
真剣な顔をして聞くクロロの真っすぐな瞳に急に恥ずかしくなったは目を逸らすと黙り込んだままうつむいた。
「嫌ならもうしないけど?」
クロロは恥ずかしがるを見るといじめるように言った。
「うっ・・・・・・・・」
『嫌じゃない。』なんて恥ずかしくて言えるわけもなく言葉に詰まる
「そうか・・・・・。悪かったな。さっきのは忘れてくれ・・・。」
クロロはの困った姿見たさにわざと突き放すように言ってみせた。
「・・・・・・・・・・・っっ。」
は自分が今、何を言ったら良いのか分からず言葉に詰まったままだ。
「この話はやめよう・・・。」
更に追い討ちをかけるクロロ
「そんな事ない ! ! 全然イヤなんかじゃないってば ! ! ! 」
追い詰められたは思わず大きな声で叫んだ。
「全然イヤじゃない ! ! ! んだな?」
クロロのに対するいじめは止まらない。
「・・・・・・あっ!あ〜っっ ! ! わざとでしょ ? ! もぉーーーっっ ! ! クロロのバカ!」
はからかわれていた事に気付くとあたふたしていた自分に恥ずかしくなって体育座りで顔を隠しうずくまって動かない。
気が付けばさっきまでの燃えるような綺麗な赤い夕焼け空はいつの間にか日が落ちて薄暗くなっていた。
「くしゅん!」
春といっても日が落ちてしまえばまだまだ肌寒い季節だ。
「寒いのか?」
くしゃみをしたを気遣いクロロが声を掛けた。
「ズズッ・・・・・・。」
は鼻をすすりながら顔を上げるとバックの中からカーディガンを取り出し腕時計を見た。
「・・・・・・時間か?」
その様子を見ていたクロロがに聞いた。
「あと1時間位かな・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
クロロは黙ったまま遠くを見つめ何やら考えているようだった。
はそんなクロロに気付くと月灯りに浮かび上がり美しく咲く夜桜を見上げた。
何分位経ったのだろう・・・。
クロロは何も言わずにまだ遠くを見つめたままだった。
「クロロ・・・私・・・そろそろ行かなくっちゃ・・・・・・。」
はもう一度、腕時計を見るとうつむいた。
「・・・・・・・・・・・・・。」
クロロは突然立ち上がると少し前に進みに背を向けたまま月を眺めている。
「・・・時間作ってまたここに戻って来いよ。」
やっと口を開いたクロロはに背を向けたまま言った。
「うん!時間空いたらまたこの街に帰って来るよ。」
はまたいつ会えるか分からないこの別れの寂しさを振り切るように明るく返した。
「・・・・・いや、そうじゃない・・・・・。」
「?」
「俺がお前とまた会いたいんだ・・・。俺の為だけにここへ帰って来るっていうのは嫌か?」
そう言うとクロロは静かに振り返りの目線に合わせるように膝をついてかがんだ。
まるでその瞳はの答えを待つかのようだ。
『本当?」
はクロロからそんな言葉が出てきたことに驚いて思わず聞いた。
「何だ?信じられないか?」
「だって・・・・・・。 ! ? ! ? 」
戸惑うの言葉をさえぎるようにクロロはキスをした。
「これで信じたか?」
クロロは真っ直ぐにの瞳を見ると頭を撫ぜながらそっとと引き寄せた。
「またチューしたな?」
は恥ずかしそうにはにかむと甘えるようにクロロの顔を見て嬉しそうに耳打ちをした。
「ありがと。・・・・・・これからはずーっと一緒だよ。」
空にはいくつもの星達がキラキラと光り輝き桜の木は花びらを降らしていた。
まるで二人を祝福しているかのように・・・・・。
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