出会い  〜遠い春の日〜



二人の出会いはもう何年も前の事・・・・

流星街の外れに位置するここは身寄りのない子供達を世界各国から集め
あらゆる武器の製造、使い方、戦闘技術などを教育し未来の犯罪者予備軍として
育て上げる施設だ。
その中でも周りの子供達から変わり者扱いされていた子供が一人いた。
彼はこの施設の中では問題児だ。
施設を抜け出してはどこかへ行くのが毎日の日課だった。

彼の名前はクロロ。

今日もまたある国から女の子が連れて来られた。
子供達が注目する中、無表情でこの施設を管理し子供達を教育している男の言う通り 騒ぐ事もなく
指示に従っている。
いくつも並んだドアの一つの前で止まり男が言った。

「今日からここがお前の部屋だ。その他の事は最初に説明した通りだ。
分からない事があったら近くの部屋の奴に聞けばいい。 お前はここにいる奴等と比べ大人しく
賢そうだから分かっていると思うが我々に逆らえばどうなるか検討がつくだろう。」

少女は男の話を黙ったまま聞いている。

「分かったらさっさと部屋に入るんだ。」

そう言って男が少女の腕に触れた瞬間、男はもの凄い勢いで5メートル以上離れた突き当たりの
壁まで吹き飛んだ。
大きな物音に他の管理者達が男の下へ駆け寄る。


・・・ ザワ・・・ ザワ・・・


部屋にいた多くの子供達が騒ぎ出す。
少女は何事もなかったかのように顔色一つ変えず指示された通り部屋に入るとドアを閉め
用意されていたベットに寝転がると天井を見つめた。

『 コン コン 』

ドアをノックする音が聞こえた。
少女はゆっくり起き上がりドアを少しだけ開けるとドアの向こうには一人の子供が立っていた。
それがクロロと少女の出会いだった。

「お前も念が使えるのか?」

少女は初めて会うクロロの顔を無表情のまま見つめている。
「俺の名はクロロ=ルシルフルだ。お前、名前は?」
「・・・・・・忘れた。名前なんて呼ばれた事ないから・・・。」
少女は少し考えるとそう答えた。
「じゃあ、俺が名付け親になる。今から俺の一番好きな場所に連れて行ってやるから そこに着いたら
お前の名前を二人で考えよう。」

やっと少女はドアを全部開けた。

「行けるか?」

少女は小さく頷くとクロロと共に施設を後にした。



来たばかりの見知らぬ土地を駆け抜けるとこの街で一番大きな一本の木の下に着いた。

大きな木を見上げる少女の表情が一気に変わった。
「これが桜の木だ。」
薄桃色の小さな花がひしめき合って咲いている。
「桜・・・?」
「どうだ?満開になれば今よりもっと綺麗になる。心が和むような木だ。」
初めて目にした桜はあまりにも大きく立派なもので少女はすっかり見とれてしまっている。

「お前、っていう名前はどうだ?」
クロロは急に思いついたかのように言った。
・・・・。」
「そうだ。、よろしくな。」
クロロはそう言って優しく微笑んだ。

これを機に二人は共に行動するようになった。

少し離れた街にいるクロロの幼なじみもこの木に自然と集まるようになり 施設を抜け出しては
みんなで色んな事をして過ごした。


次第に無表情だったは笑顔を見せるようになり持ち前の明るさをゆくっりと少しづつ
取り戻していった。

back