何度も、何度でも同じ季節の中を歩いて行けると思ってた。
幼かった頃の記憶
それは今も私の心の中で繰り返される
たった一つの
温かい記憶
流星街の中心部から少し離れた場所には廃材の街には不釣合いな場所もある。
その中でも大きな森は春には木々が青々と生い茂り、この街からは想像も出来ない程の空間だった。
いつものようにクロロに連れ出された私は彼の後姿を追いかけ始めてから、どの位の時間が経ったのだろう?
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
やっとの思いで辿り着いたのは、森一面が白く輝く白銀の世界だった。
「見て、クロロ!息が真っ白だよ ? ! 」
「、お前もしかして初めてか?」
「ん?何が ? ? 」
「普通、冬には息が白くなるものだろう?」
「・・・・・そういうものなの?」
「そうだ。」
「初めて見た!」
「そうか・・・。それは良かったな。」
流星街に来るまでは親にさえ気味悪がられていた私は “ 外遊び ” というものを全くしたことがなかった。
正確に言えば、あの出来事以来・・・。
それからの生活の中で外に出た記憶はなく、カーテンを閉ざされた部屋の中で一人だったのだから・・・。
「はぁ〜〜〜〜〜〜。」
は何度も白くなる息を吐き出しては眺め嬉しそうにする。
「楽しいか?」
「うん。」
「そうか。」
何度も繰り返し息を吐くを優しく見守るようにクロロは言った。
「この真っ白なものは触ってもいいの?」
さっきまで楽しそうにしていたは雪を眺めながら不思議そうな顔をしている。
「これはな、こうやって使うん・・・だ!」
クロロは目掛けて白い雪玉を投げた。
「痛っ!」
クロロの投げた雪の玉はの顔にヒットした。
そんなことはお構いなしにクロロは足元にある雪を掻き集め雪玉を素早く作ると投げ続けた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜っっ。」
は見様見真似で雪玉を作るとクロロに向かって力いっぱい投げた。
「当たらないな。」
「絶対当てるから!」
必死になって雪を集める
その間にもクロロは攻撃の手を休めない。
「痛いってば!ズルいよ?クロ・・・」
『べチャ ! ! 』
木の枝に積もった雪がクロロの頭の上に勢い良く落下した。
「きゃははは!」
は全身雪塗れ、情けない姿のクロロを嬉しそうに見て笑うと止めの一発を浴びせる。
の投げた雪玉は見事にクロロを直撃した。
「、覚悟は出来てるな?」
身体に付いた雪を掃いながらクロロは含み笑いを見せる。
は急いで深い森へと走り出した。
後を追うクロロ
の背後からは絶え間なく続けられる雪玉攻撃
「捕らえた!」
クロロの言葉と同時には大きく体勢を崩した。
「きゃ!」
クロロに掴まれた上着の裾が伸び二人は真っ白な海へダイブした。
「わはっ、はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」
「気持ちいい・・・。」
鼻の頭を真っ赤にさせたは雪の中をコロコロと転げ回ってみせた。
「かなり走ったからな。」
二人は寝転がったまま静かに空を見上げた。
「クロロ!」
クロロの白い肌が雪になってしまいそうではクロロの手をギュッと握り締めた。
「・・・俺は此処にいる。」
「うん・・・。」
大切なものが、私を救ってくれた大切な人が雪と一緒に溶けてしまわぬように繋がれた手
その2つの小さな手から互いの体温を感じ取る。
「寒くないか?」
「寒いけど、温かい!」
「俺もそんな気分だ。」
それは繋がれた手から伝わる確かで温かい想い
遠い、遠い幼い記憶
初めて見た景色
色褪せぬ想い出
今も心の中に
温かい記憶が蘇る
****あとがき****
何か一昔前のメロドラマのようになってしまいました・・・。
この話は長編の番外なんですが、子供の頃のクロロは少し無邪気なところを見せる感じにしてみました!
そしたらメロドラマっすわ・・・(沈
これから迎える本格的な冬に向けての作品なんで一応テーマを “冬” と “雪”
に設定してみました。
楽しんでもらえたら嬉しいデス!
ここまで読んでくれた方々に心より感謝。
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